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 Liquid Culture 

 この方法は、ファージを液体培地で増殖させて、DNAを単離するものである。液体培地でのファージの増殖は、大腸菌の増殖とファージの溶菌のバランスが ポイントとなる。つまり、ファージに対して大腸菌の量が多すぎると大腸菌ばかりが増えてしまいファージがあまり溶菌しないし、ファージに対して大腸菌の量が少なすぎるとファージがすぐに大腸菌を溶菌し尽くしてしまい、それ以上ファージが増殖しない。この様に、感染(infection)時のファージと大腸菌の比 を最適にするのが難しいが、この比さえ分かれば大量にきれいなDNAが単離できる。
 ここでは、20ml cultureの方法を述べる。この方法では、約15μgのDNAが単離できる。さらに少量のDNAでも良い場合は、4ml cultureの方法がMolecular Cloning Second Editionの2.121ページに載っているので参照してもらいたい。

  1. 試薬一覧

    次の2点の試薬が追加される他、プレートライセート法と同様である。

    1. 5M NaCl
    2. クロロホルム:イソアミルアルコール (24:1)

  2. 実験操作

    1. 100ml滅菌三角フラスコにNZYMを5ml入れ、20%マルトースを50μlと1M MgSO4を50μl加えて、そこにシングルコロニーから取ってきた宿主大腸菌を植菌し、37℃, 170 rpmで約10時間振とうする。大腸菌が液体培地中で増殖し、液が白く濁る(OD値, A600=2が最適)。
    2. 滅菌試験管に1.で培養された大腸菌100μlを分注し、3段階ぐらいに希釈されたファージ溶液を適当量ずつ(例えば、原液を1/10, 1/100, 1/1000に希釈したものを5μlずつ)加えて37℃で20分間インキュベートする(ファージの感染)。
    3. 20mlのNZYMを加えて、100ml滅菌三角フラスコに移し、37℃,170rpmで一晩振とうする。上手く溶菌すれば、4〜5時間ぐらいまで濁度が増加し、それを過ぎると減少する(図1)。そして、約8時間ぐらいで液が透明になる。濁度の増加は大腸菌の増加を示し、それが透明になっていくのは、ファージが大腸菌を溶菌して増加していることを示している。
    4. 溶菌して、糸くず状のものが現れたことを確認した後、400μlのクロロホルムを加え、37℃, 170rpmで15分間振とうする。クロロホルムを加えることによって生き残っている大腸菌は死ぬ。
    5. 溶液を50mlチューブにデカントで移し、4℃で10000rpm, 10分間遠心し、上清を新しい50mlチューブにピペットマンで移す。
    6. 5.に50〜200μlのRNase (10mg/ml)と10μlのDNase (10mg/ml)を加え、37℃で30分間反応させる。この操作により、大腸菌のRNAとDNAが分解される。
    7. 20%PEG・2M NaCl(in λdiluent)を1vol.加えて、おだやかに撹拌し、氷上で2時間以上放置する。この操作によって、ファージ粒子が析出する。
    8. 7.を4℃で10000rpm,10分間遠心し、デカントにより上清を除去する。その後、もう1度4℃で10000rpm,5分間遠心し、ピペットマンで上清を除去する。
    9. チューブを逆さまにして放置し、余分なPEGを落とす。
    10. 9.のチューブに1×TEを500μl加えて、ファージ粒子を懸濁し、1.5mlチューブに移す。
    11. フラッシュして夾雑物を落とし、それを吸わないように上清を新しい1.5mlチューブに移す。
    12. 0.5M EDTAを10μlと10%SDSを5μl加えて、よく撹拌した後、68℃で15分間保温し、ファージ粒子を壊す。
    13. 12.に5M NaClを20μl加える。
    14. 13.にフェノール・クロロホルム(1:1)を1vol.加えて、おだやかに数分間反転することにより混合し、室温で12000rpm,5分間遠心する。上層を新しい1.5mlチューブに移す。
    15. 14.の操作をもう一度繰り返す。
    16. 15.にクロロホルム・イソアミルアルコール(24:1)を1vol.加える、おだやかに数分間反転することにより混合し、室温で12000rpm,5分間遠心する。上層を新しい1.5mlチューブに移す。
    17. 16.にイソプロパノールを1vol.加えて、十分に混合しながら、沈殿を析出させる。析出したDNAは、量が多ければ糸くず状になりチューブの内壁に付着するはずである。従って、遠心は行わない。完全に混合した後、上清を捨てる。
    18. 70%エタノール 500μlを用いて、DNAとチューブの内壁を洗う。この操作をもう1度繰り返した後、室温で風乾する。
    19. 採取したDNAは、1×TEを30〜50μl加えることにより溶解する。


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