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 コンピテントセル作成 

  コンピテントセル

 外から与えたDNAを取り込む能力が上昇した大腸菌をコンピテントセルという。コンピテントセルの効率は用いた大腸菌の菌株によって大きく依存する。コンピテントセルを調整する方法は幾つかあるが、ここでは塩化カルシウム法と塩化ルビジウム法について説明する。より効率の良い方法を求めるのであれば、塩化ルビジウム法を薦める。単に、形質転換が行えればよいのであれば、塩化カルシウム法で充分といえよう。 コンピテンシーの測定するためには、pBR322 1μgあたり形成されるコロニー数を計算すればよい。このとき、1x107以上のコンピテンシーであれば充分実験に使えると考えてよい。ただ、現在はpBR322が余り使用されていないので、pUC118あたりで代用してもかまわない。ただし、このときは1x107よりも大きい値でないと、pBR322におけるコンピテンシーと同等とは言えない。その理由として、pBR322とpUC118の大腸菌内でのコピー数に違いがあるからである。 この技術を身につければ、プラスミドにクローニングした遺伝子を大腸菌内で増やすことが可能となる。また、現在当研究室では行っていないが、cDNAライブラリーをプラスミドベクターに連結し、スクリーニングするためにもこのコンピテントセル作りは重要であるが、このときにはかなり高いコンピテンシー(例えば5x108〜1x109ぐらい)が必要なようである。


   塩化カルシウム(CaCl2)法

    1. 準備
        トランスフォーメーション可能なE. coli菌体(ここではXL-1 Blue)
        1x LB(オートクレーブしたもの)
        オートクレーブ済み三角フラスコ(100ml, 500ml容)
        50mM CaCl2(オートクレーブしたもの)
        20%(W/V)グリセロール/50mM CaCl2(オートクレーブしたもの)

    2. 前日の準備
      クリーンベンチ内で100ml容三角フラスコに1x LB(液体)を5ml(+tet)加え、大腸菌(XL1-Blue)を植菌し、37℃(あるいは25℃でもよい)一晩振とう培養する。

    3. コンピテントセルの調製
      1. 500ml容三角フラスコに1x LB(液体)を100ml(+tet)加え、あらかじめ37℃に暖めておく。その培地に一晩培養した大腸菌培養液を1ml混ぜる(最終的に220μlコンピテントセル液がエッペンに45本ぐらいとれる)。
      2. 37℃(あるいは25℃)で振とう培養し、30分置きぐらい(この時間はODの値を見ながら適当に間隔を置く)にOD600の値をはかる。OD600が0.5になるまで培養を続ける。37℃の場合、2時間振とうすれば、盲目的にOD600が0.5になるとしてよい。
        • 測るとき
          2つの1ml容セルに1x LBを1mlずつ加え0補正した後、片方の1x LBを捨て、それに大腸菌培養液を希釈せずに1ml加え、ODの値を測る。
          また、ODの値が0.5に近い大腸菌液を使い、0.5を越えないようにする。
      3. 50ml容のコーニングチューブに培養液を等分に分注し、氷中で30分冷却する。
      4. 4℃,2500rpm,5分遠心する。
          ☆ ここで、50mM CaCl2を氷中で冷却し始める。
      5. 培地を三角フラスコに捨て(オートクレーブして廃棄)、さらにペーパータオルの上にコーニングを逆さにして培地をよく取り除く(オートクレーブして廃棄)。
      6. 50mM CaCl2を25ml加え、氷水中で穏やかに懸濁する。ペレットが懸濁しにくい場合には、チップの先などでよく懸濁する(チップはオートクレーブ廃棄)。
      7. 懸濁液を氷中に60分放置。
         ☆ 50mM CaCl2/20%グリセロールを氷中で冷却し始める。
      8. 4℃,2500rpm,5分遠心する。
      9. 上清を除き、氷冷した50mM CaCl2/20%(W/V)グリセロールを5ml加え、氷水中でよく懸濁する。ペレットが懸濁しにくい場合には、チップの先などでよく懸濁する。(チップはオートクレーブ廃棄)
      10. エッペンを45本くらいエッペン立てに並べる。
          液体窒素を用意する。
      11. 一つのエッペンに220μlずつ分注し、分注したものから液体窒素で急冷凍する。後は-80℃で保存し、必要なとき必要な分だけ氷中で解凍しその都度使いきるようにする。
         

   塩化ルビジウム法

    1. 準備
      トランスフォーメーション可能なE.coli菌体(ここではXL-1 Blue紹介する)
      1x LB(オートクレーブしたもの)
      オートクレーブ済み三角フラスコ(100ml, 200ml容)
      RF1
      final
      1.3g RbCl 100mM
      0.99g MnCl2・4H2O 50mM
      0.14g CaCl2・2H2O 10mM
      15ml グリセロール 15%
      0.3g CH3COOK 30mM
      ※ 100ml (0.2M 酢酸でpHを5.8に合わせ、0.22μmフィ ルターで滅菌)

      RF2
      final
      0.13g RbCl 10mM
      1.10g CaCl2・2H2O 75mM
      15ml グリセロール 15%
      0.21g MOPS 10mM
      ※ 100ml (0.1N NaOHでpH6.8に合わせ、0.22μmフィル ターで滅菌)

    2. 前日の準備
      1. クリーンベンチ内で100ml容三角フラスコに1x LB(液体)を5ml(+tet)加え、 大腸菌を植菌し、37℃(あるいは25℃でもよい)一晩振とう培養する。

    3. コンピテントセルの調製
      1. 500ml容三角フラスコに1x LB(液体)を100ml(+tet)加え、あらかじめ暖めておく。その培地に一晩培養した大腸菌培養液を1ml混ぜる(最終的に220μlコンピテントセル液がエッペンに72本ぐらいとれる)。
      2. 37℃(あるいは25℃)で振とう培養し、30分置きぐらいにOD600の値をはかる。OD600が0.5になるまで培養を続ける。
        • 測るとき
           2つの1ml容セルに1x LBを1ml加え0補正した後、片方の1x LBを捨て、それに希釈せずに大腸菌培養液を1ml加え、ODの値を測る。
           また、OD600の値が0.5に近い大腸菌液を使い、0.5を越えないようにする。
      3. 50ml容のコーニングチューブに培養液を等分に分注し、氷中で10〜15分冷却する。
      4. 4℃,3000rpm,15分遠心する。
           ☆ ここで、RF1溶液を氷中で冷却し始める。
      5. 培地を三角フラスコに捨て(オートクレーブして廃棄)、さらにペーパータオルの上にコーニングを逆さにして培地をよく取り除く(オートクレーブして廃棄)。
      6. RF1溶液30ml加え、氷水中で穏やかに懸濁する。ペレットが懸濁しにくい場合には、チップの先などでよく懸濁する(チップはオートクレーブ廃棄)。
      7. 懸濁液を氷中に30分以上放置し、4℃,3000rpm,15分遠心する。
          ☆ ここで、RF2溶液氷中で冷却し始める。
      8. 上清を除き、氷冷したRF2溶液を8ml加え、氷水中でよく懸濁する。ペレットが懸濁しにくい場合には、チップの先などでよく懸濁する(チップはオートクレーブ廃棄)。
      9. エッペンを72本くらいエッペン立てに並べる。
          液体窒素を用意する。
      10. 一つのエッペンに220μlずつ分注し、分注したものから液体窒素で急冷凍する。後は-80℃で保存し、必要なとき必要な分だけ氷中で解凍しその都度使いきるようにする。

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