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 Invitrogen Kit (First Trak) 

  はじめに

 ここでは、Fast Track mRNA Isolation Kit ver.3.2 (Invitrogen Corporation) を用いて、mRNAを抽出する方法を紹介します。0.4〜1.0gの組織の試料を用いて行います。この方法で、抽出されたmRNAは、cDNAの合成、Northern blot analysisに用いることができます。筆者らは、この方法を用いて、柱頭1,000個からcDNA ライブラリーを合成しました。現在、Fast Track mRNA Isolation Kit ver.3.5が販売されていますが、手法はver.3.2と基本的に同じです。
 RNAを取り扱う実験の場合、実験者は最も危険なRNaseの混入源となってしまうため、汚染を防ぐため、ディスポーザブル手袋をつけて、もし話す必要がある場合はマスクもつけて実験を行います。また、試薬や器具もRNA実験専用とします。

  1. キット付属の試薬
    110ml Stock Buffer
    16ml Elution Buffer
    2ml RNase/Protein Degrader
    4ml 2M NaOAc
    10ml 5M NaCl
    6 Tablets Disposable Spin Columns and Oligo(dT) Cellulose Tablets
    6 each Microcentrifuge Tubes
    240ml Low Salt Wash Buffer
    220ml Binding Buffer

  2. 準備するもの
    乳鉢、乳棒、薬匙
    ※ これらは、あらかじめ121℃で20分間オートクレーブした後、180℃で5時間乾熱滅菌しておく

    メスピペット、シャーレ(ディスポーザブルのもの)

  3. プロトコール

    1. 1g以下の試料を、エッペンドルフチューブに入れるかあるいはアルミホイルで包み、液体窒素で急速に凍結させる。すぐ用いるときは以下の操作に従い、しばらく用いない場合は -80℃で数か月間保存できる。
    2. Stock Buffer に沈殿があったら45℃に温めて溶かす。Stock Buffer 15ml にRNase/Protein Degrader 300ul を加えたものを Fast Track Lysis Buffer とする。各試料ごとに、Fast Track Lysis Buffer 15mlを用意する。
    3. あらかじめ乳鉢と乳棒を液体窒素で冷却しておき、そこで試料を粉末になるまですりつぶす。
       ☆ この操作は手早く行い、試料が融解しないように適宜液体窒素を注ぎながら行う。
    4. 50mlコーニングチューブに Fast Track Lysis Buffer 5ml を入れておき、液体窒素で冷却した薬匙で、粉末にした試料をこのコーニングチューブに移してかき混ぜながら溶かす。
       ☆ Fast Track Lysis Buffer により、組織を溶解する。
    5. 溶解液をシャーレに移し、18-21ゲージのシリンジで吸い込み、コーニングチューブへ戻す。この操作を4回繰り返す。その後、Fast Track Lysis Buffer の残り (10ml)でシャーレを洗って、その液を同じコーニングチューブに入れる。
       ☆ この操作によって、高分子のDNAが小さな断片に剪断される。
    6. コーニングチューブのふたの周りをパラフィルムでシールして、45℃で1時間穏やかに振盪する。
       ☆ ここで組織が完全に変性する。
    7. 3000rpmで10分間遠心し、上清をメスピペットで新しい50mlコーニングチューブに移す。
    8. 上清に 5M NaCl 950μl を加えて、混ぜる(NaCl の終濃度が0.5M となるように)。その後、18-21ゲージのシリンジで3回剪断する。
    9. そこに、Oligo(dT) Cellulose のタブレットを入れて、2分くらいふくらして、その後ゆっくりと揺り動かして、分散させる。
    10. コーニングチューブのふたの周りをパラフィルムでシールして、室温で1時間穏やかに振盪する。
      ここで、Oligo(dT) Cellulose の Oligo(dT)鎖 と poly(A)鎖 がハイブリダイズすることによって、poly(A)+mRNAのみが吸着する。
    11. 室温、3000rpmで10分間遠心し、上清をメスピペットで吸い取って捨て、Oligo(dT) Cellulose の沈殿を Binding buffer 20ml で懸濁させる。
    12. 室温、3000rpmで10分間遠心し、上清をメスピペットで吸い取って、Oligo(dT) Cellulose の沈殿を Binding buffer 10ml で懸濁させる。
    13. 室温、3000rpmで10分間遠心し、上清をメスピペットで吸い取って、Oligo(dT) Cellulose の沈殿を Low Salt Wash Buffer 10ml で懸濁させる。この操作をさらにもう2回、遠心後のbufferに濁りが無くなるまで繰り返す。
    14. Oligo(dT) Cellulose の沈殿を Low Salt Wash Buffer 300μl で懸濁させる。
    15. Spin Column をエッペンドルフチューブにはめて、そこへメスピペットで Oligo(dT) Cellulose の懸濁液を注ぎ込み、7500rpmで10秒間遠心する。エッペンドルフチューブに滴下した液は捨てる。
    16. 再び、Spin Column をエッペンドルフチューブにはめて、そこに Low Salt Wash Buffer を満たして、7500rpmで10秒間遠心する。滴下した液は捨てて、この操作をさらにもう4回繰り返す。
    17. Spin Column を新しいエッペンドルフチューブ(kit付属のもの)にはめて、そこにElution Buffer 200μl を注いでチップで cellulose と Elution Buffer を混ぜ、7500rpmで10秒間遠心する。さらに、もう1度 Elution Buffer 200μl を注いで同じ操作を繰り返す。
    18. 合わせて400μlの溶出液が得られるはずである。もし、溶出液が400μl以下だった場合、7500rpmで1分間遠心する。
    19. 2M NaOAc 60μl、100% EtOH 1000μl を加え、upside downして、-80℃で1晩放置する。
    20. 4℃、15000rpmで20分間遠心し、上清をピペットマンで注意深く除く。
    21. エッペンドルフチューブの口をパラフィルムでシールして、3か所穴を開け、5分間真空遠心機にかけて、RNAのペレットを乾燥させる。すぐに使わないときは、-20℃で保存する。


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