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●●●●● cDNA Library ●●●●●
はじめに
植物組織から抽出した poly(A)+RNA からcDNAライブラリーを作成するには、まず 、poly(A)+RNAを鋳型として2本鎖DNAを合成し、制限酵素アダプターを付加し、ベクターへ挿入することによって完成する。しかし、cDNA合成に用いたmRNAには、目的とする遺伝子以外のmRNAも含んでいるので、スクリーニングによって目的の遺伝子のcDNAを選抜する必要がある。
ここでは、cDNAライブラリーの作製方法とスクリーニングの方法について説明する。cDNAライブラリーの作製には、クローニングの効率が良く、スクリーニングか容易であるという特徴を持つλファージがベクターとして一般的に用いられている。一方、プラスミドベクターはDNAの調製が容易であるという点では、λファージベクターよりも優れているが、スクリーニング高率がλファジーベクターに比べてよくないことから、現在ではλファージベクターの方がクローニングの主流として用いられている。ただし、λファージベクターにクローニングした cDNAクローンの塩基配列を決定したりする場合には、プラスミドベクターにサブクローニングする必要があり、プラスミドベクターも重要である。
cDNAライブラリーを作成する際に合成したcDNAをクローニングするファージベクターとしては、λgt10やλgt11などが主に用いられてきた。近年、λファージベクターにクローニングしたcDNAを簡便にプラスミド(ファージミド)ベクターに変換できるように改良されたベクターが数多く市販されるようになった。そこで、ここではλZAPIIを用い、プラークハイブリダイゼーションによってスクリーニングを行った後、ヘルパーファージを感染させることによってインサートcDNAの断片をpBluescript SK-にサブクローニングすることができる実験系について説明する。
- cDNAの合成、制限酵素アダプターの付加
ここでは、cDNA Synthesis kit (Amersham-Pharmacia)を使用する。
- キット付属の試薬
First-strand reaction mixes (5) |
DTT溶液 |
EcoRI/NotI adaptors |
Second-strand reaction mixes (5) |
Klenow fragment |
T4 DNA ligase |
T4 polynucleotide kinsase |
ATP溶液 |
RNase-free water |
spun column (10) |
|
|
- 準備する物
- STE buffer
10mM |
Tris-HCl (pH7.5) |
1mM |
EDTA |
150mM |
NaCl |
- Ligation buffer
66mM |
Tris-HCl(pH 7.6) |
1mM |
Spermidine |
1mM |
MgCl2 |
15mM |
DTT |
0.02% |
BSA |
- phenol/chloroform/isoamylalcohol
phenol |
25 |
chloroform |
24 |
isoamyl alcohol |
1 |
-
ヒートブロック、15ml プラスチック遠心管、ボルテックスミキサー
- 実験方法
- 単離したmRNAをRNase-Free Water20μlに溶かす。 このとき、この溶液中に1-5μgのmRNAを含んでいなければならない。量の 測定に関しては、別項(核酸の定量)を参照のこと
- ヒートブロックを用いて65℃で10分間加熱した後、氷水で急冷して5分間放置する。
- First-Strand Reaction Mixをフラッシュしてエッペンドルフチューブの 底に集め、DTT Solution 1μlと熱変性したmRNA 1μlを加えて静かに撹拌した後、37℃で1時間保温する。
- Second-Strand Reaction Mixをフラッシュし、そこへ(3)の反応液全量加 えて静かに撹拌する。これを12℃で1時間、22℃で1時間保温する。
- この間に洗浄bufferとしてligation bufferを用いて、Spun Columnの調製 を行う。Spun Columnの調製方法は次の通りである。
- Spun Columnを数回 upside downし、gel を懸濁する。
- Spun Columnを15mlコーニングチューブに立てて、gelがある程度落ちつ いたら、上のキャップを外し、次いで下のキャップを外して、gelが沈殿している上面まで水を抜く。このとき、gelを乾燥させないように注 意する。
- bufferが落ちたら、下のキャップをつけ、洗浄buffer 2ml を注ぎ、 Spun Columnを数回upside downし、gelを懸濁する。
- (5-2)〜(5-3)の操作をさらにもう4回繰り返す。つまり、洗浄buffer は 合わせて10ml使う。
- gelがある程度落ちついたら、上下のキャップを外し、Spun Columnから 余分なbufferを抜く。このとき(5-3)のときよりも若干多めにbufferを 残しておく。
- 上下のキャップをはずし、Spun Columnを15ml遠心チューブにはめて、1600rpmで2分間遠心する。このとき遠心には、スウィングローターを用 いること。
- gelはコンパクトになり、乾燥して、ひび割れている場合もあるが問題 はない。この Spun Column を用いて試料の精製を行う。
- 4.のチューブにKlenow Fragment 1μlを加え、37℃で30分間反応させ、 その後65℃で10分間加熱する。
- 室温で Phenol/Chloroform/isoamyl alcohol 100μlを加え、軽くボルテ ックスした後、室温、12000rpmで3分間遠心する。
- 水層(上層)を、準備しておいたSpun Columnのgelの上面の中央に注ぐ。
- Spun Columnを新しい15ml遠心チューブに移して、1600rpmで2分間遠心す る。この操作によって、遠心チューブの底に精製されたcDNA溶液が得られ る。この溶液を新しいエッペンドルフチューブに移す。
- 溶出液(cDNA溶液)全量にEcoRI/NotI adaptor 5μl, ATP solution 1μl, T4 DNA ligase 3μl加える。静かに撹拌した後、フラッシュして、12℃で 1晩反応させる。
- 反応液を65℃で10分間加熱した後、氷上に置いて冷却する。
- ここで、洗浄bufferとしてSTE bufferを用いて、Spun Columnの調製を行 う。Spun Columnの調製方法は前述してある通りに行う。ここで、buffer としてSTE bufferを用いるのはこのcDNAをファージベクターに挿入する場 合である。プラスミドベクターに挿入する場合は、ligation bufferを用 いる。
- 11.の反応液にATP solution 10μl, T4 polynucleotide kinase 1μl加 えて、37℃で30分間反応させ、その後65℃で10分間加熱する。
- Phenol/Chloroform/isoamyl alcohol 100μlを加え、ボルテックスした後、 室温、12000rpmで3分間遠心する。
- 水層(上層)を、準備しておいたSpun Columnのgelの上面の中央に注ぐ。
- Spun Columnを新しい15ml遠心チューブにはめて、1600rpmで2分間遠心す る。ここで遠心チューブの底に、制限酵素アダプターが付加したcDNAが得 られる。液料としては、100μlぐらいある。この溶液をエッペンに移す。 この溶液を次の項目の"λZAPIIベクターへの挿入" に用いる。
- λZAPIIベクターへの挿入
ここでは、cDNA Synthesis Kit (Pharmacia), λZAPII Cloning Kit (STRATA GENE)を用いる。
- キット付属の試薬
λZAPIIベクター(EcoRI digested, alkaline phosphatase treated)
T4 ligase
ATP solution
- 準備する物
3M NaOAc(pH 7.0)
DEPC処理水
100%エタノール
グリコーゲン(Boehringer Mannheim, Molecular Biology Grade)
- 実験方法
- 溶出液(cDNA溶液)20μlに、DEPC処理水11μl,λZAPIIベクター(1μg/μl) 1μl,グリコーゲンを加えて静かに撹拌する。さらに、3M NaOAc 3μl、100% EtOH 60μlを加え、静かに撹拌した後、-80℃で15分間放置する。こ の操作によって、cDNAとベクターを共沈させる。
- 4℃、15000rpmで20分間遠心して、上清を除く。この段階で、白い沈澱物 が確認できる。
- 80% EtOH 200μlを注いでリンスした後、4℃、15000rpmで5分間遠心して、 上清を注意深く除く。
- エッペンドルフチューブの口を開け、サランラップで覆い、室温で10-20 分間放置して乾燥させる。
- DNAのペレットをligation buffer 9μlに溶かす。
- 先の溶液に、1/10希釈ATP solution(ligation bufferで希釈する)1μl、 T4 ligase 1μlを加えて、静かに撹拌した後、フラッシュして12℃で16時 間反応させる。反応時間を長くした方がライゲーション効率はよい。
- ファージへのパッケージング
ここではキットして、GIGAPACK III Gold (STRATAGENE)を用いる。
- キットの付属品
red tube
yellow tube
- 準備する物
- SM buffer
100mM |
NaCl |
8mM |
MgSO4 |
??? |
Tris-HCl(pH7.5) |
0.01% |
gelatin |
- chloroform
- 実験方法
- yellow tube を氷に立てて、解凍させる。
- yellow tube が解凍したら、red tubeを指に挟んで解凍し、ligated cDNA 4μlをred tubeに加える。
- yellow tubeから15μlをとり、red tubeに加え、気泡を入れないようによく混合して、フラッシュし、22℃で2時間反応させる。
- SM buffer 500μlを加えて希釈し、Chloroform 20μlを加えてよく混ぜる。 これをcDNAを含んだファージ液とする。
- 8000rpmで5分間遠心する。
- タイターの測定およびマスタープレートの作成
形成されたファージが、どの程度のプラーク形成能を有しているかの測定を 行い、それに基づいてスクリーニングすべきファージをまいたプレートを用意する。
- 準備する物
1xLB、20% maltose (濾過滅菌)、1M MgSO4、SM buffer、
Bottom agar plate (1.5% agar/1xLB:φ90mmのプラスチックシャーレに20mlずつ分注する)、
Top agar(0.7% agarose (TaKaRa LO3), 1mM MgSO4 /1xLB)、遠心チューブ、滅菌試験管、
φ90mm滅菌シャーレ、大腸菌(XL1-Blue)、墨汁、3ml注射器、26G注射針、キムタオル、ろ紙、ピンセット、
- 実験方法
- 大腸菌XL1-BlueをBottom agar plate上に、白金耳を用いて広げる。
- 37℃で培養し、単一コロニーを得る。
- 単一コロニーを白金耳で培地(1xLB;3ml, 20% Maltose;60μl, 1M MgSO4; 30μl)に加えて、37℃で16時間激しく振盪培養する。
- ファージ液をSM bufferで3段階に希釈(1/1, 1/10, 1/100)し、オートクレ ーブした試験管で各ファージ希釈液5μlとXL1-Blue培養液100μlを混ぜて、 37℃で20分間保温してファージを大腸菌に感染させる。
- 50℃に保温しておいたTop agar 3mlを試験管に注ぎ、軽く混ぜた後、37℃ に保温しておいたプレートのBottom agar上に撒いて、均一に広げる。
- プレートを逆さにして、37℃で12〜14時間保温する(プラークの直径が 0.5mm程度になったところで、恒温器から出す)。
- 生えたプラークを数えてタイター(pfu/μl; pfu=plaque formation unit) を計測し、1枚のプレートにつき30,000程度のプラークが形成されるよう に、ファージ液の量を調節して(3)〜(6)と同様の操作によりプラークを形 成させる。これをマスタープレートとする。スクリーニングすべきプラーク数は、目的の遺伝子の発現量によって異なるが、通常1万から100万程度である。
- レプリカの作成
レプリカとは、プレート上に形成されたプラークをナイロンメンブランに写 し取ったものを意味する。この操作によって、ナイロンメンブラン上にプラー クのDNAが固定化され、次に行うスクリーニングの操作に用いることができる。
- 準備する物
- メンブラン
ナイロンメンブレン (Schleicher&Schuell, NY13N Membrane filter 0.45μl, φ82mm)、
- アルカリ変性溶液
- 中和溶液
1M |
Tris-HCl(pH7.5) |
1.5M |
NaCl |
- 20×SSPE
0.2M |
NaHPO4(pH7.4) |
3M |
NaCl |
20mM |
EDTA |
-
ピンセット、ろ紙、キムタオル、恒温器
- 実験方法
- レプリカをとるときTop agarがはがれないようにするために、プラークの形成されたプレートを4℃で2時間以上冷却する。
- バットに濾紙を敷き、そこへアルカリ変性溶液を注ぎ、濾紙が完全に濡れ、 表面に溶液が少し浮いている状態にする。中和溶液、2xSSPE(20xSSPEを 10倍に希釈)もアルカリ変性溶液と同様に準備する。
- ナイロンメンブレン(Schleicher&Schuell, NY13N Membrane filter 0.45 μl,φ82mm)の光沢のない面をTop agarに密着させる。
- その状態で1分間放置し、その間に墨汁をすった注射器で3ヶ所マークして、 プレートとメンブレンの対応する位置関係が分かるようにする。
- メンブレンをTop agarからはがした後ひっくり返して、Top agarに密着し た面を上に向けた状態で、準備しておいたアルカリ変性溶液の上において 正確に5分間放置する。
- 接着面を上にしたままメンブレンを中和溶液に移して、5分間放置する。
- 接着面を上にしたままメンブレンを2×SSPEに移して、5分間放置する。
- メンブレンをキムタオルの上に置き、乾燥させる。
- メンブレンをキムタオルで挟み、80℃で2時間Bakeして、DNAをメンブレン に共有結合させる。
- すぐに使わない場合は、キムタオルに挟んだまま袋に入れ、乾燥した状態 で保存する。
- ハイブリダイゼーション・洗い・検出
得られたメンブランと目的のプローブとをハイブリダイゼーションさせ、非特異的に結合したプローブを除き、結合しているプローブのみを検出すること によって、目的とするクローンが得られる。この操作は、プラークハイブリダ イゼーションに特別なものではなく、コロニーハイブリダイゼーションやサザ ンハイブリダイゼーションにおいても用いられる方法である。
そこで、ここではプラークハイブリダイゼーションを例にとって説明を行う。 ハイブリダイゼーションに用いる溶液の組成は、含んでいるプローブを除いて ほとんどの場合、共通であることが多い。しかしながら、洗いの条件は、検出 しようとするものと、用いるプローブの相同性が重要であり、高い相同性を示 す場合には、0.2xSSC, 0.1% SDSで行うのが適当である。それに対して、相同性 が低い場合には、SSCの濃度が、0.5xから1xぐらいで行うのが適当であると思わ れる。ここでは、プローブとしてdig標識のものを用い、検出法として、蛍光基 質(CSPD)を用いるため、放射性同位体を用いたときのように、X線フィルム上に 感光する前にどの程度のプローブが残っているかをモニターすることができな い。そのため、適切な洗いの条件を決定するまでに、数回の試行錯誤を必要と するかもしれない。なお、dig標識のプローブの調整に関しては、別項(プローブの調製)を参照していただきたい。
- 準備する物
- TBS buffer
50mM |
Tris-HCl(pH8.0) |
0.9% |
NaCl |
0.02% |
NaN3 |
- Hybridization buffer
5× |
SSC |
1% |
Blocking reagent |
0.1% |
Sarcocyl |
0.02% |
SDS |
- AP 9.5 buffer
0.1M |
Tris-HCl(pH9.5) |
0.1M |
NaCl |
5mM |
MgCl2 |
- Blocking buffer
1% Blocking reagent/TBS buffer
- 5M NaCl
- 1M MgCl2、
- 2×SSC, 0.1% SDS
- 0.2×SSC, 0.1% SDS
- Anti-digoxgenin-AP Fab fragment (Boehringer Mannheim)、
-
CSPD (Disodium 3-(4-methoxyspiro{1,2-dioxetane-3,2'-(5'-chloro)tri-cyco[3.3.1.13,7]decan}-4-yl)phenyl phosphate; TROPIX)、
- 実験器具
ハイブリバック、恒温振盪機、遠心チューブ、バット、ビニール袋、ポリシーラー、振盪機、X線フィルム、現像液(レンドール)、3%酢酸、定着液(レンフィックス)、 オートラジオグラフィー用カセット、
-
実験方法
- メンブレンをハイブリバックに入れ、溶液を入れるところを除いて3方をシールする。プレハイブリダイゼーションでは1度に20枚程度処理しても 大丈夫である。
- Hybridization buffer 20〜40ml(メンブレンが充分浸る程度)を注ぎ、 泡を追い出した後、シールする。
- 65℃で8時間、ゆっくり(およそ30rpm)振盪して、プレハイブリダイゼー ションを行う。
- プローブを沸騰したお湯で10分間温めた後、氷水で急冷してそのまま10分間放置する。このことにより、プローブが変性され、1本鎖の状態になる。
- プレハイブリダイゼーションの終わったメンブレンを、新しいハイブリバ ックに入れ、3方をシールする。ハイブリダイゼーションではメンブラン を10枚以上重ねないようにする。10枚以上のメンブランを行いたい場合に は、2つ以上に分けて並べる。
- プローブ 20mlを注ぎ、泡を追い出した後、シールする。
- 65℃で16時間ゆっくり振盪して、ハイブリダイゼーションを行う。このとき、振盪器の中に0.2x SSC, 0.1% SDSも一緒に入れて、65℃に温めておく。
- ハイブリダイゼーションが終わったら、プローブは遠心チューブに回収し、 パラフィルムでシールして、-20℃で保存する。このプローブは繰り返し 使うことが出来る。
- ハイブリダイゼーションの終わったメンブレンをバットに入れ、2×SSC, 0.1% SDS 250mlを注いで、室温で5分間振盪する。これを2回繰り返す。
- 溶液を捨て、65℃に温めておいた0.2×SSC, 0.1% SDS 250mlを注いで、 65℃で20分間振盪する。これを2回繰り返す。
- 溶液を捨て、TBS buffer 100mlを注いで、1分間洗浄する。
- メンブレンをビニール袋に入れ、3方をシールする。
このときも、10枚以上の場合は、2つに分けて上下に並べる。
- Blocking buffer 20mlを注ぎ、泡を追い出した後、シールして、室温で 30分間ゆっくり振盪する。
- 溶液を捨て、メンブレンを新しいビニール袋に入れ、3方をシールする。
- Anti-digoxgenin-AP Fab fragmentをBlocking bufferで1/5000に希釈した ものを20ml注ぎ、泡を追い出した後、シールして、室温で30分間ゆっくり 振盪する。
- メンブレンをバットに入れ、TBS buffer 200mlを注いで、15分間洗浄する。 これを2回繰り返す。
- 溶液を捨て、AP 9.5 buffer 200mlを注いで、3分間浸したまま放置する。
- メンブレンを新しいビニール袋に入れ、3方をシールする。
- CSPDをAP 9.5 bufferで1/500に希釈した溶液10mlを注ぎ、泡を追い出した 後、シールして、暗黒下で5分間反応させる。このときは、10枚以上の場 合は2回に分けて行う。
- 袋から出し、キムタオルの上で余分な水分をとる。完全には乾かさず、多 少湿り気を含む程度にする。
- メンブレンをサランラップで挟み、X線フィルムの大きさに切ったろ紙に 固定する。
- 37℃で15分間放置する。
- 暗室の中で、オートラジオグラフィー用カセットに入れ、X線フィルムを 重ねて15分間露光する。露光時間は現像したfilmの像の濃さから、調節する。
- X線フィルム用の現像液で数分間現像し、停止液で30秒間停止した後、定 着液に5分間放置する。その後、しばらく水洗した後、X線フィルムを乾燥 させる。
- 陽性プラークの打ち抜き
前項で検出されたX-ray film上のシグナルを元に、プレートからファージを単離して、シングルプラークを形成させ、そこから陽性のプラークを選択する ことによって陽性のクローンが得られる。
- 準備する物
イルミネーター(ライトボックス)、ピッペトマン、チップ、エッペン、SM buffer、chloroform、ボルテックスミキサー、メス
- 実験方法
- イルミネーターの上にX-ray filmを置き、その上に墨汁でつけておいたplateのマークとplateをを重ねる。
- 1000μl用のピペットマンのチップの先を、火であぶったメスで切り取る。
- あらかじめ、打ち抜くプラークの数だけ、エッペンドルフチューブを準備 し、SM buffer 500μlを入れて、chloroform 1滴ずつ落としておく。
- 陽性プラークのある位置の周りを、先を切ったチップを付けたピペットマ ンでアガロースごとゆっくりと吸い込んみ、準備しておいたエッペンドル フチューブに入れて、室温で2時間放置する。
- エッペンドルフチューブをボルテックスして、ファージを懸濁する。
- 以上が1次スクリーニングである。2次スクリーニングでは、ファージ懸濁 液を適当な濃度で撒いて、プレート全体にプラークが100〜200個程度のプ ラークが形成され、シングルプラークが拾えるような状態にする。あらか じめ、いくつかのクローンで10-4〜10-6程度の希釈シリーズを作ってプレ ートに撒き、おおよその見当を付けると良い。
- 100〜200個程度のプラークを形成させたプレートが出来たら、5、6を繰り 返してスクリーニングを行う。ただし、7のプラークの打ち抜きでは、ピペットマンではなくパスツールピペットを用いて、シングルプラークにな った単クローンのみを打ち抜くようにする。
- in vivo excision
λZAP IIベクターの場合、単クローンになったファージ懸濁液にhelper phage(ExAssist)を感染させると、ファージ粒子中に一本鎖のpBluescript SK-を含むphagemidを形成させることができる。これをホストの大腸菌(SOLR)に 感染させ、LB plate (+Amp.)に撒くことによって大腸菌内にphagemidを含んだ コロニーが形成させることによって、容易にプラスミドへのサブクローニング を行うことができる。このため、λDNAを単離して、インサートDNAを単離して プラスミドベクターにクローニングする手間が省ける。ここでは、λZAPII Cloning Kit (STRATAGENE)を用いた実験系について説明を行う。
- 試薬類
- 1xLB
1% |
Bacto-Tyrptone |
0.5% |
Bacto-Yeast extracts |
0.5% |
NaCl |
- 2xYT
1.6% |
Bacto-Typtone |
1% |
Bacto-Yeast extract |
0.5% |
NaCl(pH7.5) |
- LB plate (+Amp)
1% |
Bacto-Tyrptone |
0.5% |
Bacto-Yeast extracts |
0.5% |
NaCl |
1.5% |
Bacto-Agar |
※ オートクレーブして、50℃程度に冷却したところで、Ampicilinを終濃度で50μg/mlになるように加える
- 20% Maltose
- 1M MgSO4
- 器具類
分光光度計、恒温振盪機、ピペットマン、チップ、大腸菌(XL1-Blue, SOLR)、50ml遠心チューブ、恒温槽、ろくろ、スプレッダー(パスツールピペットの細い部分を三角形に曲げたもの)
- 実験方法
- 大腸菌XL1-Blueを培地(1xLB;3ml, 20% Maltose;60μl, 1M MgSO4;30μl)を用いて、37℃で12時間激しく振盪して培養する。
- 分光光度計でXL1-Blue培養液のOD600を測定して、OD600=1.0になるよう1xLBを用いて調製する。
- 50ml遠心チューブに(XL1-Blue培養液(OD600=1.0); 200μl, ファージ懸濁液; 100μl, ExAssist helper phage; 1μl)を混ぜる。
- 37℃で15分間保温する。
- 2×YT 3mlを加え、37℃で2.5時間激しく振盪する。
- 70℃で20分間熱した後、4℃、5800rpmで15分間遠心し、上清の一部をエッペンに移す。これをPhage stockとし、4℃で保存する。
- 大腸菌SOLRを1×LB 3mlで、37℃で12時間激しく振盪して培養する。
- 分光光度計でXL1-Blue培養液のOD600を測定して、OD600=1.0になるように1xLBで調製する。
- Phage stockを2×YTで10倍から10,000倍程度に希釈する。
- SOLR培養液 200μlに対して、希釈したPhage懸濁液1μlずつ混合する。
- 37℃で15分間保温する。この操作によってphageが大腸菌に感染する。
- 感染させた液から50μl取ってLB plate (+Amp)に撒き、ろくろとスプレ ッダーを用いて均一に広げる。
- Plateを逆さまにして、37℃で16時間保温する。
- ここで単クローンのコロニーが得られ、このコロニーを形成する大腸菌は クローニングしたcDNAをインサートとして持つプラスミドpBlueScript SK-を内部に含んでいる。これを鋳型として、インサートの両末端の塩 基配列を決定するようなことに使える
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