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 PCR-RFLP 

  1. はじめに

     自家不和合性に関与するS遺伝子は多様性に富んでおり、100種類を越える対立遺伝子があることが知られている。これらのS遺伝子は、そのコードしているS糖タンパク質を等電点電気泳動して分析することや、S遺伝子をサザンブロット分析することにより同定、判別が可能である。しかしながらタンパク質の分析には花が必要であり、サザンブロット分析には手間と時間がかかり簡易分析法の開発が必要とされる。
     Brassica campestris のゲノミックDNAをテンプレートにしてPCR法でS遺伝子を増幅し、制限酵素で処理してそのフラグメントの大きさを分析(PCR-RFLP)することにより、S遺伝子間の多様性を検出する方法が生物研放育場の西尾剛さんにより報告されている。ここでは筆者が実際に放育場に出張して習ってきたPCR-RFLP法について、当研究室でできるようにアレンジした方法を紹介する。

  2. 試料の調製(CTAB法)

    1. 大量に調製する場合(本葉1gぐらい)

      1. あらかじめウォーターバスを60℃にセットして、2xCTABを保温する。
      2. 生葉を乳鉢にいれ、液体窒素を入れて粉砕する。試料が解けないように時々液体窒素を入れる。この時できるだけ細かく粉砕した方がDNAがいっぱい取れる。
      3. 15mlコーニングチューブに粉砕した試料を入れる。このときあらかじめチューブを液体窒素に入れて冷やしておくと試料が入れやすい。試料は-80℃に保存しておけばいつでも使える。
      4. 2xCTAB(CTAB液+0.2%メルカプトエタノール:メルカプトは直前に入れる)、5ml加え、混合。60℃ウォーターバスに10min入れる。
      5. クロロホルム・イソアミルアルコ−ル 5ml加え、30min 振盪。
      6. 遠心:2,500rpm、10min、室温
      7. 上清が濁っていたら、10、000rpmで20min遠心する。上清を回収し、イソプロパノ−ル5ml加え、手でよく振って混合し、10min以上静置する。
      8. 遠心:2,500rpm、10min、室温
      9. 70% エタノ−ル 5ml加え、リンス
      10. 遠心:2,500rpm、10min、室温
      11. 上清を捨てて、真空乾燥する。
      12. 1ml TE (1μg/ml RNase 入り)に溶かす。

    2. 微量の試料を調製する場合(本葉、約100mg)

      1. あらかじめウォーターバスを60℃にセットして2xCTABを保温する。
      2. 約100mg の生葉を細かく刻んで1.5ml エッペンドルフチューブに入れる。エ ッペンとペッスルを液体窒素に入れて冷やし、ヒートブロックの穴ににエッ ペンをはめてペッスルをぐりぐり回して粉砕する。サンプルが解けないように時々エッペンを液体窒素に付ける。このときできるだけ細かくなるように 頑張る。多くのサンプルをこなす時は、粉砕の終わったサンプルを液体窒素 の中に入れておき全てのサンプルが終わったところで次のステップに移る。
      3. 2xCTAB、200μlを加え、60℃ウォーターバスに10min入れておく。
      4. クロロホルム・イソアミルアルコ−ル 200μl加え、30min 振盪。
      5. 遠心:10,000rpm、5min、室温
      6. 上清を回収して、イソプロパノ−ル 200μl加える。
      7. 10min 振盪
      8. 遠心:10,000rpm、5min、4℃
      9. 上清を捨てて、70% エタノ−ル 500μl を加えリンス
      10. 遠心:10,000rpm、5min、4℃
      11. 上清を捨てて、フラッシングする。
      12. ピペットマンでエタノ−ルを除く。
      13. 真空乾燥
      14. 50μl TE(1μg/ml RNase 入り)に溶かす。

  3. PCR

    1. 以下のように反応液を調製する
      DNA 2.5 μl
      ( 2μM ) primer A 1.6 μl
      ( 2μM ) primer B 1.6 μl
      10xbuffer 2.5 μl
      dNTP 2 μl
      Taq (TAKARA) 0.125 μl
      DDW  
        25.0 μl
      ※ サンプル数が多いときは、Primer、10xbuffer、dNTP、Taq、DDWのMix液を作る。

    2. エッペンのミネラルオイルを2滴加える。
    3. Fileをもう一度確認し、次のPCR反応を行う(約6hr)。
          サイクル
      93℃ 1min 30 cycle
      55℃ 2min
      72℃ 3min
      72℃ 3min 1 cycle
      4℃ hold  

    4. PCR反応が終わったらsampleを-20 or -80℃に入れる。後でオイルを除き易く なる。
    5. ピペットマンでオイルを捨てる。
    6. 試料10μlに10 x dyeを1μl加えて電気泳動し、目的のDNA断片が増幅されて いるか確認する。

  4. PCR産物の制限酵素による消化

    1. 以下の通り反応液を調製する
      DDW 0.875 μl
      10×Buffer 0.5 μl
      DNA 2.5 μl
      制限酵素 0.125 μl
        4.0 μl

    2. これを37℃で 2時間反応させる。
    3. 多くのsmpleを処理するときは制限酵素+Buffer+DDWのMix液を作ってエッペンに2.5μlずつ分注した方が楽である。

  5. ポリアクリルアミド電気泳動

    1. ゲルの作製
      1. 試薬の調製

        1. 5xTBE(Tris-Borate-EDTA)
          Tris 54 g
          ホウ酸 27.5g
          EDTA・2Na・2H2O 4.65g
            1000ml

        2. 40% アクリルアミド溶液(38:2)
          アクリルアミド 38g
          N, N'-メチレンビスアクリルアミド 2g
            100ml

      2. 2枚1組のガラス板を用意しシール用のシリコンパッキンをガラス板の間に はさみ、大型のクリップではさんでゲル板を組み立てる。
      3. ゲル液混合(30ml ビ−カ−)− 5% アクリルアミドゲルを作る。
        蒸留水 6.75 ml (3.375x2)
        40% アクリルアミド液(38:2) 1.25 ml
        5xTBE 2 ml
        過硫酸アンモニウム 10〜15 mg
        TEMED 10 μl
        10 ml

      4. ゲル液をゲル板に流し込み、コ−ムを差す。約1hr放置。

    2. 泳動操作

      1. ゲルが固まったらクリップとシ−ル用のシリコンチュ−ブをはずし、脱塩水 でゲルのスロットをきれいにしてから泳動槽に取り付ける。このときゲルの 下に気胞が入らないように注意する。泳動槽を1xTBEで満たしてゲルのスロッ トもすっかり1xTBEが被るようにする。
      2. 試料4μlに5xdye1μlを混合しゲルにApplyする。
      3. 電極を間違わないように配線して、70V、15mAぐらいで泳動する。ブロムフェ ノ−ルブル−が底のゴムのところにくるまで泳動する(約1.5hr)。

    3. 銀染色(2D-銀染色試薬・「第1」ー第1化学薬品株式会社)

      1. バットに脱イオン水をいれ、水の中でゲル板からゲルをはずす。なお、以後 ゲルにさわるときは手袋付ける。
      2. 10% TCA(トリクロロ酢酸)100mlを入れ、10min振盪。
      3. 50% メタノ−ル 100ml入れ、10min振盪。
      4. 脱イオン水 100ml入れ、5min 手でゲルを沈めるように振盪する。
      5. 銀染色液 100ml(染色液A5ml+染色液B5ml+脱イオン水90ml)を入れ、 15min振盪する。
        ※ 廃液には直ちに濃塩酸を2〜3ml加え、塩化銀とする。
      6. 脱イオン水 100ml を入れ、2min 手を使ってゲルを沈めるように振盪する。 3回繰り返す。
      7. 現像液(現像原液 5ml+脱イオン水 95ml)を入れ、ゲルをのばした状態で10〜20min 放っておく。
      8. 適度の染色像が得られたら、酢酸を数適加えて現像を停止する。
      9. 現像が停止したら脱イオン水で洗う(3回ぐらい)。
      10. ゲル乾燥装置の上にゲルよりひとまわり大きなろ紙を置き、水で湿らせる。 ろ紙上にゲルを広げその上にGel Bond(FMC, 124x258 を3枚に切ったモノ) を置いて(Gel Bondとろ紙の間に気胞を入れないように注意)、ゴムのシ− トをかぶせて65℃で3hrぐらい乾燥する。

  6. あとがき

     この方法を用いれば2日間でS遺伝子の判別が可能である。しかし、この方法ではゲノムDNAの抽出が最も重要であり、これを適当にするとPCRで目的のDNA断片が増えてこなかったり、変なモノが増えてきたりと後々めんどうなことになる。ゲノムDNAは少々手間がかかっても丁寧に抽出するのがよいでしょう。また、PCRを行う際には、必ずポジティブ・コントロールも一緒に反応させた方がよい。もし何も増えてこなかったときに、ゲノム抽出に問題があるのか、PCRの腕に問題があるのかを判断する上の指標ととなります。

    健闘を祈る!!

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