- 準備物
1mlメスピペット・10mlメスピペット・5ml駒込ピペット・パスツールピペット:それぞれ20本ずつ、2ml用の注射器:2本、100mlのmediumビン:2本、廃液ビン:2本、組立式の外科用ハサミ:5組、眼科用ハサミ:7組、先の曲がったピンセット:3本、ピンセット:8本(以上の器具をアルミの箱にいれ、アルミはくで2重に包む)
※ これらの器具類は、すべてオートクレーブ滅菌を行う。
6cm滅菌シャーレ、細胞融合の1週間前に6cmシャーレの底面の70%ぐらいに増殖した細胞を50ml培養ボトル4本(または、20ml培養ボトル10本)にまいておき、3日おきに培地を交換しておいたミエローマ細胞(P6)(この条件で培養した細胞は、対数増殖期の細胞となる)、ブースト後、3日目のマウス、10cm試験管、RPMI、15% FCS/RPMI、50%PEG(RPMI30mlに30gのPEG-4000を溶かしたものをフィルター滅菌したもの)、
-PBS、0.5%トリパンブルー溶液、96穴マイクロプレ−ト(Falcon 3072):3-5枚、50ml遠心チューブ、80%エタノール、脱脂綿、
- 実験方法
- 脾臓の取り出し
- RPMI 100mlを37℃にあたためておき、2枚のシャーレに5mlのRPMIを入れておく。
- はさみやピンセットを入れておいたアルミの箱を包んでおいたアルミはくの内側をクリーンベンチ内で広げ、広げたアルミはくの内側を80%エタノールでふく。
- シャーレを5枚用意し、そのうちの2枚に5mlのRPMIをいれる。
- マウスの頚骨をはずす。このとき、心臓はまだ動いている。
- マウスを80%エタノールで毛の中まで充分に洗う。ここで完全に洗わないと、コンタミの原因となる。
- さきに用意したアルミはくの上にマウスを仰向けにしておき、腹部の皮膚をピンセットでつまみ、外科用のはさみで縦に切り開く。このとき、解剖に用いるピンセットはそれぞれの操作のたびに交換する。
- 腹腔内に毛をいれないようにして、皮膚を完全に除去する。
- むき出しとなった腹部の肉を80%エタノールでふく。
- 腹部の中心部をピンセットでつまみ、眼科用はさみで肉を切る。このとき、前肢が邪魔な場合には脱臼させる。
- 腹部やや右下に位置している真っ赤な臓器(脾臓)をむき出しにする。
- 脾臓の周りについた脂肪や皮を丁寧に除き、脾臓を取り出す。
- 取り出した脾臓はすばやく5mlのRPMIのはいったシャーレに移す。
- さらにマウスを解剖し、心臓をむき出しにして、眼科用はさみで切込みをいれ、パスツールピペットですばやく流れ出る血液を吸い取る。
- 集めた血液は、前述の要領で抗血清にする。ただし、この操作は融合の作業が終わってからにする。
- 脾臓細胞の調製
- 脾臓の外皮を除去して、もう1枚の5mlのRPMIのはいったシャーレに移す。
- 眼科用のはさみで脾臓に2、3箇所切り目を入れる。
- オートクレーブした2mlの注射器に滅菌済みの針をつけ、きれいなRPMIを吸って、脾臓にさし、脾臓中に出す。この操作で先の切り目から脾臓細胞が出て来る。なおこの操作は、きわめて丁寧に行い、5、6回以上繰り返す。
- 先の曲がったピンセットで脾臓をはさんだり、離したりしながらバラバラにして、脾臓細胞を完全に出す。
- 脾臓だけをもとのシャーレにもどす。
- 真っ赤な血液の塊をシャーレに残すようにして、脾臓細胞を遠心チューブに移す。
- 遠心管内で数回ピペットで吸ったりはいたりして、ピぺッティングする。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 少量を試験管に移し、細胞数を数え、全細胞数を計算する。脾臓細胞は、P6に比べはるかに小さく丸い細胞である。計測法は前項に従うが、通常は次のように行えばうまくいく。まず、原液 0.1mlを-PBS 0.9mlで希釈し、この10倍液 0.1mlをさらに-PBS 0.9mlで希釈したものを数え、50万倍すれば全細胞数となる。普通1匹のマウスから取れる脾臓細胞数は、5x108である。
- 先の残りの細胞をもう1度懸濁する。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨てる。
- ミエローマ(P6)細胞の調整
- ピぺッティング操作により、用意したボトルから細胞をはがし、50ml遠心チューブに移す。このとき実際に使用するのは用意した細胞のうちの半分で、増殖の良いものから選ぶ。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 少量を試験管に移し、細胞数を数え、全細胞数を計算する。計測法は前項に従うが、通常は次のように行えばうまくいく。まず、原液0.1mlを-PBS0.4mlで希釈し、この10倍液 0.1mlをさらに-PBS 0.9mlで希釈したものを数え、25万倍すれば全細胞数となる。
- 先の残りの細胞をもう1度懸濁する。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 脾臓細胞とP6の比が、2:1から10:1の範囲内で混合すればよいので、この範囲内に適当な比になるように先のミエローマ(P6)を必要量とり、2-13の50ml遠心チューブに加える。
- さらに、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 細胞融合
- 混合した細胞の上清を完全に捨てる。少しでも残っていると融合率が下がるので、注意する。
- この1の細胞と50% PEGを37℃であたためる。
- 50% PEG 1mlをメスピペットでとり、50ml遠心チューブの中で1分間で完全に出し切るように混ぜながら出す。このときはじめは、ゆっくり出す。混ぜるのは、かなり強く行う。
- さらに1分間混ぜる。
- 37℃のRPMI 1mlを同じように、メスピペットでとり、1分間かけて完全に出し切るように50ml遠心チューブの中に混ぜながら出す。
- さらに、37℃のRPMI 1mlを同じように行う。
- 7mlのRPMIを2回に分けて、2-3分間かけてかき混ぜながら加える。
- 1000rpm、6分間、室温で遠心する。
- 上清をピペットでそっと吸い出す。
- 3mlのRPMIを少しずつ加えながら、クリーンベンチ内のガスホースにたたきつけて混ぜる。このとき絶対にピぺッティングしてはならない。行うと融合した細胞がバラバラになる。
- このサスペンションを適当量の15%FCS/RPMIで希釈し、0.1ml中に2.5x105の脾臓細胞となるようにする。これを、96穴のマイクロプレートの1well当たり、0.1mlずつにまく。このときも10と同じようにして希釈する。
- 7% CO2、37℃のCO2インキュベーター内で培養する。
- 細胞融合の翌日から陽性コロニーのスクリーニング時までの培養法
細胞融合した翌日から、HAT選抜を行う。
- 準備物
パスツールピペット・駒込ピペット(オートクレーブ滅菌したもの)、100x HT保存溶液(ヒポキサンチン:136.1mg, チミジン:38.8mg; DDW 100ml に溶解させ濾過滅菌し-20℃で保存)、1000x アミノプテリン保存溶液(アミノプテリン:17.6mg; DDW 100ml に溶解 させ濾過滅菌 -20℃で保存)、50x HAT(100x HT保存溶液:50ml, 1000x アミノプテリン保存溶液:5ml; 滅菌 したDDWを加え100mlにして、-20℃で保存)、50x HT(100x HT stock solution を滅菌したDDWで2倍に希釈し、-20℃で保存)、HT/15% FCS/RPMI(RPMI 83ml+ FCS 15ml+ 50x HT 2ml)、HAT/15% FCS/RPMI(RPMI 83ml+ FCS 15ml+ 50x HAT 2ml)、卓上型の吸引ポンプ、24穴のマイクロプレート(Falcon 3047)、
- 実験方法
- 細胞融合の翌日に、前日まいた96穴マイクロプレートのそれぞれのウェルに0.1mlのHAT/15% FCS/RPMIを加える。
- 細胞融合の2日後、3日後、5日後、それ以降は2日おきに培地の交換を行う。交換の仕方は、吸引ポンプの吸い口をビニールホースで延長し、その先にオートクレーブ済みのパスツールピペットをつけたもので培地を半分だけ吸い取り、0.1mlのHAT/15% FCS/RPMIを加える。
- この培養方法は細胞がウェルの面積の1/5-1/3になるころまで行ってよい。ただし、このころになると陽性(抗体産生細胞)のコロニーでは、抗体の産生が盛んになるため 2の方法で培地交換を行うと、コンタミの原因となる。そこで、面倒ではあるが、そのころからは培地の交換はそれぞれのウェルごとに、パスツールピペットを交換しながら行う。このころから陽性コロニーのスクリーニングを行う。スクリーニングの方法は、その後使う実験の方法に影響を与えることがあり得るので、充分に検討を行ってから選択しなければならない。代表的なスクリーニングの方法であるELISAとイムノブロット法については後述するので、そちらを参照されたい。24穴のマイクロプレートに継代した陽性のコロニーは、なるべく早くクローニングしなければならない。もし陽性の細胞数が少ない場合には、その細胞が死に絶えてしまうかも知れないからである。また、このころになると、継代、スクリーニング、クローニングと操作が煩雑になるので、陽性と判断した細胞集団をクローニングしないで凍結保存しておくのも一つの手段であろう
- 陽性と判断したウェルは、パスツールピペットでピぺッティングで細胞をはぎ取り、1mlのHT/15% FCS/RPMIを入れてある24穴のマイクロプレートに継代する。この後の培地は、HT/15% FCS/RPMIを用いる。その後は、細胞の増殖の具合いを見ながら6cmのシャーレに継代する。
- クローニング
ここでは、代表的なクローニングの方法であるフィーダー細胞を使った限界 希釈法について紹介する。そのほかのクローニング法として軟寒天法もあるが、 その方法については後にあげる成書を参考にしていただきたい。またここで取 り上げるフィーダー細胞は、脾臓細胞と胸腺細胞であるが、こうした細胞の代 わりに市販されている細胞増殖因子などを用いるのもよい。
- 準備物
1mlメスピペット・10mlメスピペット・5ml駒込ピペット・パスツールピペット(それぞれ20mlを20本ずつ)、2ml用の注射器:2本、100mlのmediumビン:2本、廃液ビン:2本、
組立式の外科用ハサミ:5組 、眼科用ハサミ:7組、先の曲がったピンセット:3本、ピンセット:8本(以上の器具をアルミの箱にいれ、アルミはくで2重に包む)
これらの器具類は、すべてオートクレーブ滅菌を行う。
6cm滅菌シャーレ、50ml遠心チューブ、4-6週齢のマウス(Balb/c;雌)、10cm試験管、RPMI、HT/15% FCS/RPMI、96穴マイクロプレ−ト(Falcon 3072):3-5枚、-PBS、0.5%トリパンブルー溶液、24穴のマイクロプレートに継代してある陽性の細胞集団、位相差倒立顕微鏡
- 実験方法
- 脾臓と胸腺の取り出し
- RPMI 100mlを37℃にあたためておき、2枚のシャーレに5mlのRPMIを入れて おく。
- はさみやピンセットを入れておいたアルミの箱を包んでおいたアルミはくの内側をクリーンベンチ内で広げ、広げたアルミはくの内側を80%エタノールでふく。
- シャーレを5枚用意し、そのうちの2枚に5mlのRPMIをいれる。
- マウスの頚骨をはずす。このとき、心臓はまだ動いている。
- マウスを80%エタノールで毛の中まで充分に洗う。ここで完全に洗わない と、コンタミの原因となる。
- さきに用意したアルミはくの上にマウスを仰向けにしておき、腹部の皮膚をピンセットでつまみ、外科用のはさみで縦に切り開く。このとき、解剖に用いるピンセットはそれぞれの操作のたびに交換する。
- 腹腔内に毛をいれないようにして、皮膚を完全に除去する。
- むき出しとなった腹部の肉を80%エタノールでふく。
- 腹部の中心部をピンセットでつまみ、眼科用はさみで肉を切る。このとき、 前肢が邪魔な場合には脱臼させる。
- 腹部やや右下に位置している真っ赤な臓器(脾臓)をむき出しにする。
- 脾臓の周りについた脂肪や皮を丁寧に除き、脾臓を取り出す。
- 取り出した脾臓はすばやく5mlのRPMIのはいったシャーレに移す。
- さらにマウスを解剖し、胸骨を切断し、胸骨上部まで眼科用はさみで切り込む。
- 胸骨を持ち上げると胸骨の付け根のところに、白い臓器(胸腺)が見える。
- 胸腺の周りについた脂肪や皮を丁寧に除き、胸腺を取り出す。
- 取り出した胸腺はすばやく別の5mlのRPMIのはいったシャーレに移す。
- 脾臓細胞の調製
- 脾臓の外皮を除去して、もう1枚の5mlのRPMIのはいったシャーレに移す。
- 眼科用のはさみで脾臓に2、3箇所切り目を入れる。
- オートクレーブした2mlの注射器に滅菌済みの針をつけ、きれいなRPMIを 吸って、脾臓にさし、脾臓中に出す。この操作で先の切り目から脾臓細胞が出て来る。なおこの操作は、きわめて丁寧に行い、5、6回以上繰り返す。
- 先の曲がったピンセットで脾臓をはさんだり、離したりしながらバラバラにして、脾臓細胞を完全に出す。
- 脾臓だけをもとのシャーレにもどす。
- 真っ赤な血液の塊をシャーレに残すようにして、脾臓細胞を遠心チューブに移す。
- 遠心管内で数回ピペットで吸ったりはいたりして、ピぺッティングする。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 少量を試験管に移し、細胞数を数え、全細胞数を計算する。脾臓細胞は、P6に比べはるかに小さく丸い細胞である。計測法は前項に従うが、通常は次のように行えばうまくいく。まず、原液 0.1mlを-PBS 0.9mlで希釈し、この10倍液 0.1mlをさらに-PBS 0.9mlで希釈したものを数え、50万倍すれば全細胞数となる。普通1匹のマウスから取れる脾臓細胞数は、5x108である。
- 先の残りの細胞をもう1度懸濁する。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨てる。
- 胸腺細胞の調製
- 胸腺をきれいに洗い、もう1枚の5mlのRPMIのはいったシャーレに移す。
- 眼科用のはさみで胸腺に2、3箇所切り目を入れる。
- 先の曲がったピンセットではさんだり、離したりしながら胸腺をバラバラにして、胸腺細胞を完全に出す。
- 胸腺だけをもとのシャーレにもどす。
- 胸腺細胞を遠心チューブに移す。
- 遠心管内で数回ピぺッティングする。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 少量を試験管に移し、細胞数を数え、全細胞数を計算する。計測法は前項に従うが、通常は次のように行えばうまくいく。まず原液 0.1mlを-PBS0.9mlで希釈し、この10倍液 0.1mlをさらに-PBS 0.9mlで希釈したものを数え、50万倍すれば全細胞数となる。普通1匹のマウスから取れる胸腺細胞数は、2x108である。
- 先の残りの細胞をもう1度懸濁する。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlの15%FCS/RPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- このサスペンジョンを先に調整してある脾臓細胞と混合し、1ml中に両者の細胞の合計が、1x107になるようにHT/15% FCS/RPMIで希釈する。
- 陽性細胞の調整
- ピぺッティング操作により、用意したウェルから細胞をはがし、遠心チューブに移す。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 少量を試験管に移し、細胞数を数え、全細胞数を計算する。計測法は前項 に従う。
- 先の残りの細胞をもう1度懸濁する。
- 1000rpm、10分間、室温で遠心する。
- 上清を捨て、5mlのHT/15% FCS/RPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
- 先の細胞数の計測の結果から、0.1ml中に細胞がそれぞれ、1/2、1、2、4、 になるようにサスペンジョンを希釈する。それぞれの希釈区を10mlも作っておけば充分である。
- クローニングする陽性細胞のまき込みとフィーダー細胞の添加
クローニングする系統数、調整できた脾臓細胞と胸腺細胞数にもよるが、1系統に対して96穴のマイクロプレート1枚でクローニングを行う。つまり、さきに用意した4つの希釈区をそれぞれ24穴ずつにまき込んでクローニングを行う。
- いずれの希釈区もそれぞれ、1ウェルに希釈した細胞を0.1mlずつ加える。
- 位相差顕微鏡で、1ウェルに1細胞だけまき込んだウェル中の細胞の位置を確認し記録しておく。この後この細胞のみを観察し、1細胞由来のモノクローナル抗体であることの証明とする。
- 先の調整した脾臓細胞と胸腺細胞の混合液を1ウェルに0.1mlずつ加える。
- この後は、2日おきにウェルごとにパスツールピペットを交換しながら、半分量の培地の交換を行う。添加する培地は、HT/15% FCS/RPMIを用いる。細胞がウェルの面積の1/4ぐらいにまで増殖したら抗体産生の有無を検定する。そうして陽性となった細胞集団は、ある抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとなる。そのため、その細胞集団をコンタミさせないようにしながら、継代、増殖、凍結保存する。それぞれの操作は、前述してあるので省略する。
- スクリーニング法
ここでは、代表的なスクリーニング法であるELISAとイムノブロット法につい て述べる。先にも述べたようにスクリーニング法の選択を間違えると、その後の実験に使えなくなることもあり得るので、充分に検討してから行わなければならない。
- ELISA(Enzyme Linked Immuno Solvent Assay)
固相(96穴タイタープレート)に固定した抗原に対して、抗体(1次抗体)を反応 させる。結合した抗体に対する抗体(2次抗体)に適当な酵素(アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼなど)で標識しておき、それとさらに固相内で反応させる。結合していない抗体を洗浄して、標識してある酵素に対する発色性の基質を加えて発色させる。発色したウェルが陽性抗体を含んでいるものを意味し、その発色の程度から、産生された抗体の力価(Titer)が測定される。以上のようなことから、比較的簡便なスクリーニング法であるが、抗原が精製されてなければならない欠点もある。
ここでは、抗原を一定にして、産生されている抗体の性質を調べることを目 的とした。しかしながら、目的とした抗体ができあがった場合に、いろいろな抗原との反応性を調べる実験にも応用できる。
- 準備物
96穴マイクロタイタープレート(Falcon 3912)、-PBS(+0.1% NaN3添加)、0.5% SM/-PBS(スキムミルク0.5gを-PBS 1000ml に溶解させ、4℃で保存)、培養上清、アルカリフォスファターゼで標識してある抗マウスIgG(H+L)抗体(プロメガ社のものを0.5% SM/-PBSで6000倍に希釈して使用する)、抗原(免疫に用いたもの)、AP基質溶液(ジエタノ−ルアミン:97ml, NaN3:0.2g, MgCl2・6H2O:0.1g; DDWを加え1000ml にしたものを1N HClでpH9.8に調整し、4℃で遮光保存)、p-ニトロフェニルリン酸2ナトリウム、405nm用イムノリーダー、ピペットマン、チップ、1N NaOH、1N HCl、
- 実験方法
- 96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに抗原を0.1mlずつ加え、室温で3時間または4℃で1晩反応させる。抗原溶液の濃度は、それぞれのタンパク質によって異なるので、いくつかの濃度シリーズを作製し、あらかじめ、どの程度の濃度であれば検出できるか検討を行う必要がある。
- 抗原の量が少ない場合には回収して再利用する。
- それぞれのウェルに-PBSを0.2ml加え、洗浄する。この操作を3回繰り返す。-PBSを捨てる操作は、アスピレーターで吸ってもよいが、簡易的には、プレートをひっくり返すという操作でよい。
- 0.5% SM/-PBSで30-60分間放置する(この操作をブロッキングするという)。
- 培養上清をクリーンベンチ内で0.1ml加え、室温で3時間または4℃で1晩反 応させる。
- それぞれのウェルに-PBSを0.2ml加え、洗浄する。この操作を4回繰り返す。
- 0.5% SM/-PBSで30-60分間ブロッキングする。
- 6000倍に希釈した2次抗体を各ウェルに抗原を0.1mlずつ加え、室温で3時間または4℃で1晩反応させる。
- それぞれのウェルに-PBSを0.2ml加え、洗浄する。この操作を3回繰り返す。
- それぞれのウェルに-PBSを0.2ml加え、15分以上放置し、洗浄する。この操作を3回繰り返す。
- AP基質溶液にp-ニトロフェニルリン酸2ナトリウムを1ml当り1mgの割合で溶かした発色液をそれぞれのウェルに0.1ml加え発色させる。
- 適当に黄色く発色したところで、1N NaOHで反応を止め、イムノリーダーで比色する。
この実験のコントロールは、培養上清を加える項(5)のみを省略したものとする。
- イムノブロット法
一般に言うイムノブロット法とは、抗原タンパク質を含んだ組織抽出物を電 気泳動により分離し、それをニトロセルロースのような膜に転写したものを抗 体により検出する方法のことである。ここでは、まず電気泳動法としてSDS-PAGEとIEFについて説明し、電気的に膜に転写し、抗体と反応させ検出する方法を説明する。
- SDS-PAGE
SDS-PAGEとはタンパク質をSDS存在下で加熱することによって変性させ、結合したSDSの量から分子量の違いによって分離する方法である。そのため、タンパク質の立体構造が崩れ、抗原決定基が崩れると言う欠点もあるが、頻繁に使われる電気泳動法の一つである。
- 準備物
電気泳動装置(ガラス板、泳動槽、シリコンパッキン、コーム、可変電源装置)、 30%アクリルアミド・1.2%ビスアクリルアミド(A液)、1.5M Tris-HCl(pH 8.8), 0.4% SDS(B液)、0.5M Tris-HCl(pH 6.8) 0.4%SDS(C液)、10%過硫酸アンモニウム(D液;作製当日しか使えない)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、10% SDS、2-メルカプトエタノール(2-ME)、
組織粗抽出物(50mM Tris-HCl(pH 7.5)などの適当な緩衝液で抽出する)、30%ショ糖、2.5% BPB(Bromo Phenol Blue)、泳動用緩衝液(25mM Tris, 192mMグリシン, 0.1% SDS)、再蒸留水、ピペットマン、チップ、メスピペット、50mlビーカー、エッペン、
- 実験方法
- 10%ゲル(幅14cm、高さ10cm、厚さ1mm)を作製する場合、分離用混合液(A液 6ml、B液 4.5ml、再蒸留水 7.5ml、TEMED 10μl、D液 180μlを混合)をシリコンゴムでパッキングして組み立てた2枚のガラス板の間に高さ10 cmにまで流し込み、すぐに少量の蒸留水を重層する。
- 30-60分静置後、ゲルと蒸留水の境界面が見えるようになり、ゲルの重合 が確認できる。
- 重層した蒸留水を捨て、濃縮ゲル用混合液(A液 0.9ml、C液 1.5ml、再蒸留水3.6ml、TEMED 6μl、D液72μlを混合)をガラス板の最上部から1cm のところまで流し込み、すぐにコームを差し込む。
- 15-30分静置することで、ゲルは重合する。
- 下端のシリコンゴムをはずして泳動槽にセットして上下の泳動槽に泳動用 緩衝液を満たす。
- 組織粗抽出物と10% SDSと2-MEとBPBを12:4:1:3で混合し、100℃で5分間煮沸したものを泳動用試料液とする。
- 濃縮ゲルの上に泳動用試料液をいれ、25mAの定電流で約5時間泳動する。
- BPBの青いバンドがゲルの下端に達する前に泳動を停止し、転写の操作の準備を行う。転写方法については、後述する。
- IEF
IEFとは、両性担体存在下のゲル中でタンパク質をその等電点の違いにより分離する方法である。タンパク質は、変性しないで電気泳動されるので、抗原決定基を壊すことはかなり少なくなると考えられる。キャリアーである両性担体としては、アンフォライトやファルマライトなどがある。
- 準備物
電気泳動装置(ファルマシア・マルチフォー 冷却用クーラー付き)、電源装置(2000V, 100mA, 50W以上の能力のあるもの)、ガラス板(100mmx250mmx0.5mm)1組、ゲルボンドシート、ローラー、クリップ 1組(6個)、10%アクリルアミド溶液(9.7%アクリルアミド・0.3%ビスアクリルアミド)、ファルマライト(pH 3-10)、グリセリン、再蒸留水、過硫酸アンモニウム(22.8mg/ml;毎回作製する)、0.04M D,L-アスパラギン酸(+電極液)、1N NaOH(−電極液)、電極用ろ紙、サンプル添加用ろ紙、組織粗抽出物(50mM Tris-HCl(pH 7.5)などの適当な緩衝液で抽出し、遠心分離した上清)、0.1% NP-40、駒込ピペット、真空ポンプ、スパーテル、ピンセット、ピペットマン、チップ、エッペン、
- 実験方法
- 冷却用のクーラーのスイッチをいれ、4℃に設定する。
- ガラス板に蒸留水をたらし、疎水性の面を上にしてゲルボンドシートをおき、ローラーで均一にする。
- スペーサーのあるガラス板を重ね、クリップでとめる。
- 10%アクリルアミド溶液 8.5ml、ファルマライト(pH 3-10) 1.1ml、グリセリン 2.91g、再蒸留水 5.2mlを混合する。
- 真空ポンプで脱気する。
- 過硫酸アンモニウムを0.34ml加えてよくまぜ、すばやくガラス板の間に注入する。ガラス板の両側を残りの液でシールする。
- 室温で2時間放置すると完全に凝固する。もし、すぐに使用しない場合には、サランラップで包んで、冷蔵庫で保存する。1週間ぐらいは使える。
- スパーテルを下のガラス板とシートの間に差し込み、スペーサーのあるガラス板を持ち上げるようにして、下のガラス板をはがす。
- シートを上にして、端からシートをはがす。こうするとゲルは、スペーサーのついたガラス板の方に残っている。
- 泳動槽の上に、0.1%NP-40を3mlぐらい広げる。
- 先のガラス板の上に乗ったゲルを泳動槽の上にのせる。このとき、気泡が入らないように注意する。
- ゲルの長さよりも2cm長い電極ろ紙を電極液で湿らせ、ゲルの端と少し重ねるようにして置く。
- 電源装置の電圧を2000V、電流を100mA、電力をゲルの幅10cm当り3Wに設定し、タイマーを30分に設定した後、初期泳動を行う。
- 30分後、サンプル添加用ろ紙をゲルの長い方に沿って5mm間隔で1列に並べ、組織粗抽出物をろ紙1枚当り20μl添加する。
- 電力のみを2倍に設定し直し、30分間電気泳動する。
- 30分後、サンプル添加用ろ紙を除去し、再び1.5時間電気泳動を行う。こ のとき、泳動時間が1時間を経過したときに、電圧の読み値が2000Vで一定になっていれば、その後10分ぐらい泳動を行って電気泳動を終了して構わない。
- 泳動が完了したゲルをガラス板ごと取り出す。
- 電極ろ紙を除去するため、ゲルと電極ろ紙の境目をカッターできる。このとき、このガラス板は、永久に使うものなので切る作業はガラスに傷をつ けない程度に行う。また、アルカリ側はゲルが少し融けたようになってい るので、すこし多めに除去する。
- 除去し終わったゲルの上に転写用のろ紙を1枚重ねる。このとき、端からティッシュでこすりながら、気泡をいれないように行う。この操作で、ゲルは完全にろ紙にくっつく。
- ゲルの端からろ紙をガラス板からはがし、ゲルの面を上にしてろ紙をゲルよりの一回り大きく切る。このとき、ゲルの方向がわからなくならないようにするために、ゲルの一方のろ紙を切り取っておく。
- 膜への転写から抗体との反応、検出
転写に用いる膜としては、従来から用いられているニトロセルロ−ス、ナイロン、GVHP、PVDFなどがある。転写の方法には、wet typeのものとsemi-dryのものがあるが、現在よく使われているsemi-dryのものについて説明する。
- 準備物
GVHPまたは、PVDFメンブラン(ミリポア社)、TBS(50mM Tris HCl(pH 8.0), 150mM NaCl) 、AP9.5(0.1M Tris HCl pH 9.5, 0.1M NaCl, 5mM MgCl2)、培養上清、2次抗体;アルカリフォスファターゼで標識してある抗マウスIgG(H+L)抗体(プロメガ社のものを6000倍に希釈して使用する)、0.5% SM/TBS(スキムミルク 5.0gをTBS 1000mlに溶解させ、4℃で保存)、0.1%NP-40/TBS(NP-40(Nonidet P-40)1mlをTBS 1000mlに溶解させ、4℃で保存)、転写用ろ紙、転写用緩衝液(39mM Glycine, 48mM Tris, 0.0375% SDS, 20%メタノール)、転写装置(ファルマシア社)、電源装置(2000V, 100mA, 50W以上の能力のあるもの)、メタノール、NBT(Nitro Blue Terazolium; 50mg/ジメチルホルムアミド(DMF) 1ml)、BCIP(5-Bromo 4-Chloro 3-Indolyl phosphate p-toluidine salt; 50mg/70% DMF 1ml) 、20cm試験管、ポリシーラー、
- 実験方法
- メンブランをゲルと同じ大きさに切り、メタノールで1時間平衡化する。
- 転写装置を開けて、両側の転写面を蒸留水でふく。
- ゲルと同じ大きさに切った9枚の転写用ろ紙を転写用緩衝液で湿らせて、下側の転写面(+極)の上に置く。20cm試験管で、転写用ろ紙の中に含まれ ている気泡を追い出す。
- このろ紙の上に、先のメンブランをおく。
- さらに、その上にゲルをおく。そのとき、SDS-PAGEの場合は、使い捨て用 の手袋を用いて行い、IEFの場合には、ピンセットを使ってゲルの面をメンブランと重なるようにする。
- さらに、ゲルと同じ大きさに切った9枚の転写用ろ紙を転写用緩衝液で湿らせて、ゲルの上に置く。20cm試験管で、転写用ろ紙の中に含まれている気泡を追い出す。
- その上に上側の転写面(-極)を重ね、ふたをする。
- ゲルの大きさ1cm2当り0.8mAになるように、電流をセットする。さらに、電圧は2000V、電力は14Wに設定しておけば充分である。
- この条件下で、1時間転写する。
- 転写の終了したメンブランを電気泳動した時の電極の方向に沿って、5mm幅で切断する。このとき、それぞれの断片ごとに番号をつけておく。このメンブランをすぐに使わない場合には、TBSに入れ、冷蔵庫内で保存しておけばよい。
- 断片をさっとTBSで洗浄する。
- 0.5% SM/TBSで6-12時間ブロッキングする。
- 培養上清と室温で3-5時間または、4℃で1晩反応させる。反応は、ビニール袋をシールしたものを用いればよい。
- TBSで2回、0.1% NP-40で1回、さらにTBSで2回洗浄する。
- 0.5% SM/TBSで6-12時間ブロッキングする。
- 2次抗体と室温で3-5時間または、4℃で1晩反応させる。
- TBSで2回、0.1% NP-40で1回、さらにTBSで2回洗浄する。
- AP9.5で1回洗浄する。
- メンブランをビニール袋にいれ、発色液(AP 9.5:5ml, NBT:33μl, BCIP:16.5μl)を加えて、発色を行う。
- 適当なところで、反応を停止し、蒸留水で洗浄した後、乾燥し保存しておく。