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 モノクローナル抗体調製 〜培養方法〜 

  モノクローナル抗体作製法

 本編は大きく分け、2節から構成されている。前半は、モノクローナル抗体を作製するに当たって必要な動物細胞の培養法に関連したことを述べる。後半は、この技術を用いて、モノクローナル抗体の作製法の実際を説明することにする。

  1. 動物細胞培養の基礎技術
      モノクローナル抗体を作製するためには、動物細胞を培養できなければなら ない。ここでは、その基本技術を記述する。この節で説明した技術を十分に習 得した後に、モノクローナル抗体を作製することを薦める。

  2. ミエローマ細胞の培地(RPMI1640)作製法
    1. 準備物
      RPMI 1640 medium with Glutamate without Sodium bicarbonate (Flow Laboratories cat.no.10-601-26):10.42g(1000ml用)、1N HCl、NaHCO3、 Sodium pyruvate、硫酸カナマイシン(明治製菓):200mg力価/ml、フィルター滅菌器、吸引ポンプ、オートクレーブ滅菌したmediumビン(500ml用と100ml用)、2回蒸留水(DDW)、スターラー、

    2. 実験方法
      1. DDW 900mlに1N HCl 5mlを加える。
      2. RPMI 1640 1袋をスターラーをまわしながらゆっくりと加え、2時間以上撹拌する。
      3. NaHCO3 2.0g、Sodium pyruvate 0.11g、硫酸カナマイシン 60mg力価(0.3ml)の順に加え、40分以上撹拌する。
      4. 1000mlにメスアップする。
      5. オートクレーブ済みのフィルター滅菌器でフィルター滅菌する(決してオ ートクレーブしない。)
      6. 500mlずつに分注して4℃で保存(1カ月有効)
      7. これでもととなる培地が完成したことになるが、実際に使う際には、15%の割合でFCS(牛胎児血清:Flow Laboratories社のものを使うこと)を加える。以降これを15% FCS/RPMIとする。

  3. 通常の培養法
    全ての培養操作の基本であるから、充分な訓練を必要とする。

    1. 準備物
      駒込ピペット・パスツールピペット(オートクレーブ滅菌)、6cm滅菌シャーレまたは20ml用培養フラスコ、15% FCS/RPMI、7% CO2、37℃条件に設定したCO2インキュベーター、クリーンベンチ、ミエローマ細胞(P6)、

    2. 実験方法
      1. ハイブリドーマの片親であるミエローマ(P6)細胞を生きたままか、凍結した状態で実験をすでに行っている研究室から譲り受けるか、購入する。凍結細胞の解凍の仕方は後述する。
      2. 1x105細胞を5mlの15% FCS/RPMIに懸濁し、6cmシャーレにまく。細胞数の数え方は、後述する。
      3. このシャーレをCO2インキュベターに入れ培養し、3-4日おきに、継代する。

    3. 継代法
      通常の操作であり、3-4日おきに行う必要がある。

      1. 準備物
        駒込ピペット・パスツールピペット(オートクレーブ滅菌)、6cm滅菌シャーレまたは20ml用培養フラスコ、15% FCS/RPMI、7% CO2、 37℃条件に設定したCO2インキュベーター、滅菌済みの50ml遠心チューブ、廃液ビン(適当なコップをオートクレーブしたもの)、クリーンベンチ、低速遠心器、

      2. 実験方法
        1. 培養中のシャーレを少し傾けて、駒込ピペットで培地を吸ったりはいたりすることで、細胞をはがす。
        2. 細胞を50ml遠心チューブに移して、1000rpm、10分間遠心する。
        3. 上清を捨て、5mlの15% FCS/RPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
        4. 細胞数の計測する。測定法については、後述する。
        5. 5ml培養用のシャーレに予め必要量の15% FCS/RPMIを入れておき、先のサスペンジョンから1x105細胞を含むように取り、シャーレに加え、CO2インキュベーターに入れ培養する。但し、細胞がシャーレの底1面に広がるまでは、簡易的に3-4日おきに古い培地を捨て、新しい培地を加えても構わない。

    4. 凍結保存
      重要な細胞はいつまでも培養を続けるのは危険であるから(突然変異などで 形質が変わる恐れがあるため)、凍結保存を行う必要がある。普通、凍結を行 うにはプログラムフリーザーや液体窒素を必要とする。しかし、こうしたもの は高価であったり維持が大変であるので、ここでは保護剤として、FCSとDMSOを用いた簡便法で行う。

      1. 準備物
        駒込ピペット、パスツールピペット、1ml・5mlメスピペット(オートクレーブ滅菌したもの)、凍結用チューブ(Nunc Cryotubes 3-66656)1ml用、FCS(牛胎児血清)、凍結用チューブがはいる大きさの発泡スチロール(上下でふたのできるもの)、50ml遠心チューブ、廃液ビン(適当なコップをオートクレーブしたもの)、ジメチルスホオキシド(DMSO);オートクレーブし室温で暗所に保存すること、RPMI(作製法は前述)、対数増殖期にある細胞(凍結保存液1ml当り1x107;細胞が容器いっぱいに増殖している場合の目安として、6cmシャーレで培養している場合は2枚、20ml用培養フラスコの場合は1本)、低速遠心器

      2. 実験方法
        1. 培養中のシャーレを少し傾けて、駒込ピペットのピぺッティングにより細胞をはがす。
        2. 細胞を遠心チューブに移して、1000rpm、10分間、室温で遠心する。
        3. 上清を捨て、5mlのRPMIを加えて駒込ピペットで懸濁する。
        4. 細胞を遠心チューブに移して、1000rpm、10分間、室温で遠心する。
        5. FCSとDMSOを9:1で混合した凍結保存液を新しい遠心管に作る。
        6. 上清を完全に捨て、凍結保存液1ml当り1x107細胞になるように凍結保存液を加え、パスツールピペットでやさしくピぺッティングする。このとき決して泡を立てない。
        7. 凍結保存液に懸濁した細胞1mlをパスツールピペットで吸い、凍結保存チューブに入れ、ふたを完全にし、容器のラベルには、必ず、細胞の名前、実験者名、継代数、年月日を記入する。このとき決して泡をいれない。
        8. 凍結を行うまでの間は、氷の上において置く。
        9. 先の凍結保存チューブを発泡スチロールの容器にいれ、ふたのところをビニールテープでシールする。このとき、上下を逆さまにしない。
        10. -80℃の冷凍庫にいれて凍結する。翌日には凍結が完了しているので、別の箱にいれて同様に-80℃の冷凍庫で保存する。通常この条件で1年間は保存可能である。

    5. 解凍法
       細胞を凍結する際には、ゆっくりと凍結するのが基本であるが、解凍は、一気に37℃にまでもっていかなければならない。

      1. 準備物
        駒込ピペット、パスツールピペット、1ml・5mlメスピペット(オートクレーブ滅菌したもの)、凍結保存してある細胞、15% FCS/RPMI、50ml遠心チューブ、廃液ビン(適当なコップをオートクレーブしたもの)、6cm滅菌シャーレ、RPMI、低速遠心器、

      2. 実験方法
        1. 凍結してあった凍結チューブを取り出し、37℃の湯の中につけ、一気に解凍する。
        2. パスツールピペットで凍結チューブから細胞を取り出し、遠心チューブに移し、RPMIを5ml加え懸濁し、1000rpm、10分間遠心する。
        3. 上清を捨て、5mlの15% FCS/RPMIを加えて駒込ピペットで懸濁し、6cm滅菌 シャーレに移し、CO2インキュベターに入れ培養する。

    6. 細胞数の計測
        通常の培養、継代にも細胞数の計測は重要であるが、細胞融合やクローニングの際、特に重要な技術である。培養の途中で必要に応じて行い、必要量だけ クリーンベンチ外に取り出し、有菌の状態で行ってよい。そのため、クリーンベンチから取り出した後に用いる器具を滅菌する必要はない。

      1. 準備物
        パスツールピペット、0.5%トリパンブルー(in 0.15M NaCl)液、-PBS(calsium and magnesium free phosphate buffered saline; NaCl:8.0g,KCl:0.3g, Na2HPO4:0.073g, KH2PO4:0.02g/ DDW 1000ml に溶解させ濾過滅菌4℃で保存)、血球計算盤、位相差倒立顕微鏡、試験管、ピペットマン、チップ、

      2. 実験方法
        1. クリーンベンチ内で懸濁してある細胞を試験管に0.1ml取り、-PBSで10倍に希釈する。これ以降の操作は、クリーンベンチ外で行って良い。
        2. この溶液に0.5%トリパンブルー溶液を1/10量(0.1ml)加え、よく混ぜる。
        3. 血球計算盤をホルダーにセットし、ガラスのすきまから、(2)の溶液を入れる。
        4. この血球計算盤を位相差倒立顕微鏡にセットし、細胞数を数える。このとき、計算盤内の上下2箇所にある5箇所の計測面(4角と中央の1箇所)、合計10箇所の生きた細胞数のみを数える。ここで言う生きた細胞とは、光っている細胞のことであり、死んでいる細胞とは細胞内が青く染色されているものをさす。
        5. 10箇所で数えた生きた細胞数の合計が、100-300ぐらいになるように(1)の希釈率を調整する。
        6. 10箇所の体積は、深さが0.1mmの場合、1/1000mlであることを考慮にいれ、実際の細胞数を計算する。

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